特殊詐欺拠点から110人脱出 監禁と暴力・東南アジアに拠点移動の実情とは
勤務先は「タイの観光地レストラン」と聞いていた。
ところが、空港に着くや否や目隠しをされ、バスに乗せられ、
着いたのはカンボジア国境付近の見知らぬ施設。
そこから先は、逃げ場のない監禁生活だった。
オンライン詐欺のノルマを課され、
殴る蹴るの暴行、電気ショック、そして「臓器を取るぞ」という脅し。
「海外就職」「高収入」「初心者歓迎ITの仕事」といった
言葉に誘われて帰ることができなくなった生産世代。
どのくらいの被害者がいるのかということすら把握することが難しい。
オンライン上の犯罪は、法規制の行き届かない国に拠点を置くことが有利だということで、カンボジアは世界的な詐欺組織の拠点となっている。
こういった組織は、国の政府要人と近い関係、警察も買収されているから、全く手出しができないのかというと、そうでもなく、ミャンマーなどと比べればまだ可能性がある。
シンガポールの場合は、自国民を標的にした詐欺事件が発覚すると、現地カンボジア警察と共同捜査で、犯行組織を摘発している。
捜査能力が高い国や、国際的な共同捜査を頻繁に行っている国は、被害者はいても、そうでない国によりも被害者数や被害額が抑制されているようだ。
そうでない国の例、インドネシア政府の発表によれば、カンボジア国内にいるインドネシア人労働者は推定で8万人以上だという。
涙ながらに政府に助けを求める現地からの映像、虐待を受けている映像が、出回っているが本当に痛ましい限りだ。
#tki kamboja minta tolong
逃亡しようとすればさらに厳しい罰と報復があるだろうし、現地警察は組織と癒着しているから、警察が助けてくれるわけがない。
建物の中から長い棒を持った男たちがぞろぞろと出てきて、
Tシャツ短パンサンダル履きの全く無防備なひとを路上で袋叩きにしている映像をみた。
そんな光景は現地では、よくあることなのだという。
#wni kabur dari komplek penipuan
詐欺団地といわれる建物の中には、脱出を試みた労働者が閉じ込められる
独房もあるという。引き戻されれば見せしめとしてさらに厳しい扱いをされる。
売り飛ばされて臓器を抜かれるかもしれない。
最近、 カンボジアの財界ナンバーワンの企業が、詐欺や人身売買をしていたとして、
米国、英国から制裁を受けたというニュースがあった。
暗号通貨がそのような形で差し押さえることが可能なのだということも衝撃だが、
国内の有力企業が米国から直接制裁を受けたということは、カンボジア政府にとっても脅威であり、詐欺拠点の取締りに、いよいよ着手せざるを得ないのではないかと言われている。
制裁後の影響なのかどうかはわからないが、
カンボジアのオンライン詐欺拠点から、インドネシア人110人が
脱出に成功したというニュースがあった。
そのニュースはインドネシア人労働者たちが、明るく広い川沿いの道を
地元警察に先導され、歩いて移動している映像とともに報道された。
「仲間二人が銃殺された」そのうちの一人がカメラに向かってそう言っている。
#110wni berontak, kabur
それは脱出に成功したというよりは、
路上で大乱闘になり暴行を受けているところを、
新しい方針によって出動した現地警察によって保護され、
インドネシア大使館に引き渡され、調査中というのが実態のようだ。
そもそも、何故、カンボジアがオンライン詐欺の拠点としてこんなにも
急成長しているのか。それは、世界的なパンデミック騒ぎが収束した後のこと
中国当局が国内の資金洗浄(マネーロンダリング)に対する規制と取り締まりを
厳格化したためだという。
当時、マカオのカジノ仲介業トップが逮捕されたという大事件もあったが、
それ以来、マカオの人材や資金が法執行が、カンボジアのような法執行力の弱い
地域へと、大規模な拠点の移動があった。
カンボジア側では、外資によって経済成長を図ろうと
経済特区を設けて積極的にカジノを誘致し、
シアヌークビルをはじめとした、投資ラッシュを迎えたものの、
コロナ禍で観光客も投資家も去り、放置されたビル群が、
オンライン詐欺の拠点「詐欺団地」へと転用される。
犯罪組織が利用する「カジノ特区」と言われる場所は、
有名なシアヌークビルだけではなく、ベトナム、タイ、ラオス
との国境付近にも点在している。
これらの国境地帯の特区は、国境を越えた活動に便利であり、
税制優遇が適用され、インフラが整っている上に、法執行が緩いことから
犯罪組織にとって、大変都合の良い場所になっているのだそうだ。
外部と隔絶された建物の中での監禁、強制労働、人身売買、
といったスタイルは、こういう組織では以前から
当たり前のように行われていたものだが、
海外移転によって標的が海外にも広がったため、
外国人にも適用されるようになった。
実際「経済特区」や「外国資本による発展」というのは
東南アジアの政治家が大好きな言葉だが、
特別待遇が悪用され、名称が違うだけの植民地支配に過ぎないことが多い。
大阪でもカジノ施設が2030年開業を目指して建設中だという。
インバウンド需要で経済成長を狙うということだけれど、
統合リゾートという名称がついても、やっぱりカジノはカジノ。